# きいてごくらくみてじごく
種類:江戸かるた
「聞いて極楽見て地獄」——別々の二つを比べる言葉ではない。同じバオバブの木が、話に聞けば童話の憧れ、輪郭を見つめれば核爆発のキノコ雲。一度見てしまった者は、二度と聞いていた頃には戻れない。一本の木に閉じ込めた、極楽と地獄。
聞いて極楽見て地獄。
話に聞いているうちは、天国のように素晴らしく思えたものが、 実際に自分の目で見てみると、まるで地獄のようだった—— そういう、期待と現実の落差を言い当てた言葉である。
大事なのは、ここで比べられているのが、 「別々の、両極端な二つのもの」ではない、という点だ。
比べられているのは、同じ一つのものである。 聞いただけの姿と、実際に見た姿。 その間に、天国と地獄ほどの開きがある——それが、この言葉の本体だ。
長年、ずっと気になっている木がある。
アフリカ大陸に自生する、巨大な樹木「バオバブ」。 『星の王子さま』にも登場する、あの木である。
話に聞くバオバブは、まさに極楽の風景だ。
広大なサバンナに悠然と立つ、生命力あふれる巨木。 子供の頃に読んだ童話の中では、 不思議で、少し神秘的な、憧れの対象として描かれていた。
だが、この木を、じっと見つめ続けていると—— ある日、恐ろしいことに気づいてしまった。
あの独特の樹形は、 核爆発のキノコ雲に、驚くほどよく似ている。
幹から一気に広がる枝葉のシルエット。 どっしりとした根元から、雲のように膨らんでいく上部。
一度気づくと、二度と見なかったことにはできない。 童話の中の、優しいバオバブの木が、 人類が生み出した最悪の光景と、 輪郭だけで重なってしまうのだ。
これこそが、「聞いて極楽見て地獄」の、正しい絵になる。
話に聞くバオバブは、極楽そのものである。 童話の憧れ、アフリカの雄大な自然、生命の象徴。
だが、その姿をじっと見つめた者だけが気づく、もう一つの顔がある。 同じ輪郭の中に、人類最悪の破壊の記憶が、隠れている。
別々の二つを並べたのではない。 一本の同じ木を、聞くように眺めるか、見るように見つめるかで、 天国にも地獄にもなる、という話だったのだ。
絵は、画面の左半分に、童話そのままの、 穏やかなアフリカの空とバオバブを。 右半分には、同じ木が、 炎と黒煙をまとった、あの雲へと姿を変えていく様を描いた。
一本の木の中に、聞いた極楽と、見た地獄を、両方閉じ込めたつもりである。
一度、木の輪郭にあの雲を見てしまった目は、 もう、無邪気にバオバブの絵本を眺めることはできない。
聞いて極楽、見て地獄というこの言葉は、 一度「見て」しまった者は、二度と「聞いて」いた頃には 戻れない、という重さも、同時に含んでいるのだと思う。
核の記憶も、同じではないだろうか。
数字や歴史として「聞いている」うちは、 どこか遠い、抽象的な話のままでいられる。
だが、その本当の姿を「見て」しまった人は、 二度と、それを他人事として語ることができなくなる。
一本の木の輪郭を借りて、 そのことを、静かに伝えたかった。
聞いて極楽見て地獄

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