秋の需要を見越して、 「秋の読書を楽しむ若い女性」を、30点制作した。
窓辺で本を開く女性、コーヒーカップの湯気、 色づいた庭木を背景に、静かにページをめくる横顔—— 「読書の秋」という言葉が、そのまま絵になったようなシリーズである。
ただ、ここで一つ、正直に申し上げなければならないことがある。
この30点のうち、半分は「シンプルな色使い」バージョンである。
当連載を読んできた方なら、この言葉に 一瞬、身構えたのではないだろうか。
かつて「若い女性が佇む都市の街角(シンプルな色使い)」は、 自信満々で公開して、まるで売れなかった。 続く「一人旅の若い女性と夏のビーチの風景(シンプルな色使い)」も、 二匹目のドジョウどころか、同じ沼にもう一度沈んだ。
シンプルな色使いシリーズ、通算成績、二連敗。
それでも今回、性懲りもなく、 読書の絵の半分を、この色調で作ってしまった。 学習能力の無さには、我ながら定評がある。
もっとも、今回は「静かで落ち着いた秋」という題材そのものが、 派手な色より、抑えた色調と相性が良いはずだ、という目算もある。 三度目の正直か、三度目の因縁か。 結果は、また台帳が教えてくれるだろう。
さて、もう一つ、白状しておきたいことがある。
読書を楽しむ女性の絵を、30点も描いておいて、恐縮なのだが——
私自身は、ここ数年、本を一冊も購入していない。
情報のほとんどは、インターネットで済ませている。 以前は、いくつかの学会に所属していて、 毎月届く定期刊行物に目を通していたのだが、 それすら、今は続いていない。
さらに白状すれば、これは最近始まった話でもない。 振り返ってみると、幼少の頃から、 勉強や読書そのものが、さほど好きではなかった。
つまり今回の30点は、 やったことのない読書を、想像だけで描いた絵である。
もっとも、これは初めての事態ではない。
以前、ボールルームダンスの絵を紹介したときにも、 同じことを書いた。 踊ったことは一度もないのに、ダンスの絵は量産してきた、と。
やったことがなくても、見てきたことは、たくさんある。
窓辺で本を読む人の横顔になら、 これまでの人生で、何度も出会ってきた。 静かにページをめくる指、伏せた目、 コーヒーが冷めていくのも構わず読みふける様子—— そういう光景を横目に見てきた記憶だけで、 描くだけなら、そこそこ描ける。
読まない男が、読む人を描く。 矛盾しているようで、この連載では、もう見慣れた構図だと思う。
読書の秋、30点。 うち半分は、因縁のシンプルな色使い。 描いた本人は、本を読まない。
我ながら、危なっかしい取り合わせだが、 出来上がった絵そのものは、悪くないと思っている。
今年の秋こそ、シンプルな色使いの雪辱を、 静かに果たしてもらいたいものである。
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