木漏れ日 ― 日本語にしかない光の情緒と八百万の神の気配
# イラスト:公園のベンチでひとり静かにくつろぐ若い女性
イラスト:公園のベンチでひとり静かにくつろぐ若い女性
春から秋へと季節が移ろうたびに、私は何度も「木漏れ日」がテーマのイラストを作成する。
気がつけば、その数は四百点を超えていた。
冬の厳しい光には現れないが、春の柔らかさ、夏の力強さ、秋の深み――
季節ごとに表情を変える木漏れ日は、まるで生き物のように私の前に現れる。
英語には、この「木漏れ日」を一語で表す言葉がない。
“sunlight filtering through the trees” と説明することはできても、
日本語が持つあの一瞬の情緒、揺らぎ、気配までは伝えきれない。
それは少し寂しいことでもあるが、同時に日本語の豊かさを思い知らされる瞬間でもある。
日本人は古くから、森羅万象に心を寄せてきた。
風に揺れる葉にも、川面のきらめきにも、
そして木々の隙間からこぼれる光にも、
人は「神さまの気配」を見いだしてきた。
八百万の神という考え方は、自然のあらゆる現象に魂を感じる感性から生まれたものだ。
木漏れ日もまた、そのひとつだと思う。
光が葉に遮られ、揺れ、地面に落ちるまでのわずかな時間。
その儚さの中に、私たちはなぜか懐かしさや安らぎを感じる。
それは、自然とともに生きてきた日本人の記憶が、
どこか深いところで呼び起こされるからかもしれない。
だから私は、今日も木漏れ日を描く。
光と影のあいだに宿る、言葉にならない気配を追いかけながら。
そして願うのだ。
この小さな光の揺らぎが、国や言語を越えて、
誰かの心にそっと触れる瞬間が訪れることを。
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