# イラスト:梅雨の沖縄風景|南国の海と街並みを描いた水彩イラスト・雨季の観光イメージ
イラスト:梅雨の沖縄風景|南国の海と街並みを描いた水彩イラスト・雨季の観光イメージ
沖縄の梅雨には、こんな言い方があるらしい。
母の日に始まり、父の日に終わる。
五月の第二日曜から、六月の第三日曜まで。 本土の梅雨よりひと足早く始まって、ひと足早く明ける。 覚え方としては、なかなか気が利いている。
この時期の沖縄は、観光客がめっきり減る。 海に入れず、離島にも渡りにくく、 わざわざ選ぶ人が少ないのだから、当然だ。
だが、逆に言えば——空いている。 沖縄好きにとって、これは見逃せない好機である。
とはいえ、梅雨のど真ん中はさすがに避けたい。 どうせなら、明ける直前を狙いたい。
というわけで、梅雨終盤の6月13日から、約一週間、沖縄へ行ってきた。
我ながら、良い読みだと思っていた。 去年は、ちょうど6月13日に梅雨明けしていたのだ。 つまり計算上、今年も似たようなタイミングで、 梅雨明けの沖縄に立ち会えるはずだった。
結果から言うと、外れた。梅雨は、律儀に居座り続けた。 天気は、去年の実績を参考にしてくれない。
今回の旅は、車を借りなかった。
代わりに選んだのは、 ラウンジで朝から晩までアルコールが提供されるホテルである。
これがどういう生活を意味するか、想像がつくだろう。 呑んでいるか、酔っているか。 一週間、ほぼその二択で過ごした。
行動範囲は、那覇市内と、バスで行ける近郊のみ。 遠出はしなかった。というより、する必要がなかった。 ラウンジという名の、快適な引力圏から出る理由が、特になかったのである。
一つ、誤算だったことがある。
梅雨の時期だから、多少は涼しいだろうと高をくくっていた。 甘かった。沖縄は、梅雨時でも、暑い。
湿度と気温が手を組んで、じっとりと押し寄せてくる。 傘は要るが、涼しさは要らない。 そういう季節らしい。
そして暑い日に呑む酒というのは、格別である。
人によっては「酒なんて、どこで呑んでも同じでしょう」と思うかもしれない。 違うのだ。これが、違うのである。
トロピカルな空気を吸いながら、 汗ばんだグラスを傾ける一杯は、 同じ銘柄であっても、明らかに味が違って感じられる。 気候というのは、酒の隠し味なのだと思う。
この旅で、イラストを12枚ほど描いた。
那覇市内と、バスで行ける範囲だけの、こぢんまりとした題材だ。 遠出しなかった分、被写体も限られている。
だが、これには一つ、思わぬ収穫があった。
梅雨の沖縄を描いた絵は、今まで手元になかったのである。
沖縄の絵といえば、大抵は青い空と青い海、 真夏の太陽の下の景色になる。 それはそれで美しいが、 沖縄には、もう一つの顔がある。
灰色がかった空、しっとりと濡れたアスファルト、 それでも南国らしい緑と、湿った熱気。 晴天の沖縄とは、少し違う空気をまとった風景だ。
そして、もう一つ気づいたことがある。
私のギャラリーには、「ビキニ」のキーワードだけで 300点近いイラストがある。 真夏の女性というと、大抵は水着姿になる。
だが、梅雨どきの、薄着の女性を描いた絵というのも、 考えてみれば、今まで手元になかった。
日傘ではなく、雨傘。ビキニではなく、 少し湿気を含んだ半袖やワンピース。 晴天でも真冬でもない、あの中途半端な湿度をまとった装い。 定番の陰には、案外こういう隙間が残っているものらしい。
12枚は、決して多い枚数ではない。 だが、この時期にしか描けない絵だったのだと思うと、 悪くない旅だったと感じている。
梅雨明けのタイミングを読んだつもりが、外れた。 去年の実績は、あてにならなかった。
それでも、ラウンジの酒は美味かったし、 今までになかった梅雨の沖縄の絵も、手に入った。
天気予報は外れることがあるが、 トロピカルな一杯の美味さだけは、 何度沖縄に来ても、外れたことがない。
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