イラスト:星空を眺めている若い女性
イラスト:星空を眺めている若い女性
7月7日、七夕。
短冊に願いを書く日として知られているが、 本来は「星を見る日」でもある。
普段、夜空を見上げる習慣のない方も、この日ばかりは、 帰り道でちょっと立ち止まって、上を向いてみてはどうだろうか。
晴れていれば、頭の真上あたりに、ひときわ明るい星が見つかるはずだ。 それが織姫星(こと座のベガ)である。
見つかったら、それだけでもう、七夕は成立している。 願いごとは、そのついでで構わない。
さて、私のギャラリーには 「星空を眺めている若い女性」 というシリーズがある。
夜空の下、若い女性が静かに空を見上げている。 ただ、それだけの絵だ。
そして、ありがたいことに—— このシリーズは、季節を問わず比較的人気がある。
お気づきの方もいるだろう。 私のギャラリーの女性たちは、これまで散々「売れない」と書かれてきた。 街角に佇む女性も、一人ぼっちでビーチを歩く女性も、 「物語が始まりそうな女性は、広告市場では売れない」と、私自身が分析したばかりだ。
ところが、星空を見上げる彼女は売れる。
なぜか。
彼女が何を見ているのか、誰にでも分かるからだと思っている。
佇む女性は「何を考えているのだろう?」と問いを投げてくる。 だが、星空を見上げる女性は違う。 視線の先に、ちゃんと答えが描いてある。
願い、憧れ、未来、ロマン—— 星空が、彼女の物語に「方向」を与えてくれる。
七夕、流星群、クリスマス、初詣の帰り道。 夜空は一年中、何かしらのイベントを抱えている。 おかげで彼女は、季節を問わず呼ばれ続けている。
私の描く女性の中で、彼女だけが就職に成功した理由は、 どうやら上を向いていたかららしい。
星空を見上げる絵を描いていると、思い出すことがある。
今から50年ほど前、私は高校で「天文同好会」なるものを作った。 天文観測をし、会誌を発行し、それなりに真面目に活動していた。
会員は5名ほどの小さな会だった。
ところが、この5名には妙な偶然があった。 なんと、私を含め3名が1月7日生まれだったのである。
5人中3人。同じ誕生日。 確率を計算する気にもならないほどの偶然だ。
そして、お気づきだろうか。
1月7日。ひっくり返すと、7月7日。
星に惹かれて集まった若者たちの過半数が「1/7」生まれで、 星の祭りは「7/7」にやってくる。
科学的な意味は、もちろん何もない。 ないのだが——七夕の時期になると、毎年これを思い出す。 星というのは、こういう手口で人を離さないのだと思う。
あの頃の仲間たちも、7月7日には、どこかで空を見上げているだろうか。
織姫と彦星は、実はかなりの遠距離恋愛 織姫星(こと座のベガ)と彦星(わし座のアルタイル)は、 互いに十数光年も離れている。 光の速さで飛んでも十年以上かかる距離であり、 「年に一度会う」のは、天文学的にはかなり無理のあるスケジュールである。 それでも会うことになっているのが、物語の良いところだ。
夏の大三角 ベガ、アルタイルに、はくちょう座のデネブを加えた三つの星は 「夏の大三角」と呼ばれ、夏の夜空の目印になる。 街明かりの多い場所でも、この三つは比較的見つけやすい。
本来の七夕は8月 現在の7月7日は梅雨の真っ只中で、晴天率が低い。 旧暦にもとづく「伝統的七夕」は8月にあたり、 こちらのほうが星は格段によく見える。 7月7日が曇っても、七夕にはまだ敗者復活戦があるのだ。
半世紀前、望遠鏡を覗いていた少年は、 いまや光害と夜遊びと体力低下により、 すっかり夜空を見上げなくなった。
それでも、イラストの中の彼女は、毎晩ちゃんと空を見上げている。 私の代わりに、律儀に。
7月7日。 もし夜空が晴れていたら、彼女と同じポーズを取ってみてほしい。 頭上に織姫星。少し離れて彦星。
星は逃げないが、見上げる機会のほうは、案外逃げていく。
だから今年は、私も見上げようと思う。 1月7日生まれの、あの仲間たちのことを思い出しながら。
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