イラスト:夏のビーチの風景(シンプルな色使い)
岡山からJTAに乗って2時間弱。
沖縄に着いた瞬間、私は毎回「働く気」をどこかに落としてくる。
空港の落とし物センターに届いていないか、少しだけ気になるが、
おそらく南国の風が、私のやる気をきれいに蒸発させているのだろう。
科学的根拠は、もちろんない。
だが私の体は、毎年きっちり反応する。
これはもう、体質と呼んで差し支えない。
ヤシの木を見ると、なぜか脳内で
「今日は休みでいいよ」という声がする。
誰の声かは分からない。
たぶん、私の中の「怠け者担当部署」の誰かだ。
ヤシの木は、風に揺れているだけで何もしていない。
それなのに堂々としている。
その姿勢が、私に妙な安心感を与える。
何もしなくても、意外と世界は回るのではないか。
そんな、少し危険で、だいぶ魅力的な思想を
ヤシの木は無言で植え付けてくる。
沖縄に行くと、私は写真を撮り、写生をし、イラストに落とし込む。
怠け者のくせに、創作だけは妙に真面目だ。
この矛盾を、誰か分かりやすく説明してほしい。
気づけば、作品のあちこちにヤシの木が生えている。
まるで私の怠惰が、PC画面で繁殖しているかのようだ。
放っておけば、いずれ森になるかもしれない。
「ヤシの木が好きな人間には、怠け者が多い」
そんな説を、私は自分の行動で裏付け続けている。
沖縄に行く
↓
ヤシの木を見る
↓
やる気が溶ける
↓
でも絵は描く
↓
ヤシの木が増える
↓
怠け者の証拠が積み上がる
この無限ループを、私は毎年きわめて律儀に繰り返している。
結局のところ、私は沖縄が好きで、ヤシの木が好きで、
そして怠け者としての自分も、案外嫌いではない。
風に揺れるヤシの木のように、
頑張りすぎず、折れず、倒れず、そこそこ生きていく。
それでいいのだと思う。
来年もきっと沖縄に行くだろう。
そしてまた、ヤシの木を描くだろう。
怠け者の巡礼は、まだまだ終わりそうにない。